登山用のストック(トレッキングポール)は、数千円のものから3万円超のカーボンモデルまで値段の幅が大きく、「結局どれを買えばいいの?」と迷いがちな道具です。
結論からお伝えすると——日帰り登山が中心なら、1万円前後のI型ストックで十分です。ただし、「2本セット(ダブル)で使うこと」だけは妥協しないでください。安定感がまるで違います。
この記事では、登山歴10年以上・年間50座に登る筆者が、I型ストックを3本使い潰してきた実体験をもとに、いま使っているモデルの正直レビューと、壊れる場所から逆算した選び方をまとめます。カタログスペックではなく「3本買い替えた人間にしか書けないこと」だけを書きます。

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私のストック遍歴|3本すべてI型
まずは私のストック遍歴から。10年間で3本、いずれもI型(グリップがまっすぐなタイプ)を使ってきました。買い替えの理由を振り返ると、ストックという道具の「現実」が見えてきます。
なぜI型を使い続けているのか
ストックにはI型とT型(グリップがT字のタイプ)がありますが、私は一貫してI型です。理由はシンプルで、I型は2本セット(ダブル)で使う前提の道具だから。握り方の違いは正直、TでもIでも大きな問題ではありません。それよりも「ダブルで使えるかどうか」のほうがはるかに重要です。
ダブル使用の何がいいかというと、安定感がまったく違います。特に下山時。そして渡渉(川渡り)のときの安定感は、1本と2本では格段の差があります。詳しくは後述の実戦編で書きます。
1本目→2本目→3本目、買い替えの理由
1本目:モンベルのストック(5〜6千円・約2年使用)
モデル名は覚えていませんが、入門用の手頃な1本でした。引退理由は故障ではなく——夏の安達太良山の駐車場に置き忘れるという、なんとも情けない別れ方。ストックは「失くす道具」でもある、というのが最初の教訓です。
2本目:LEKI レガシーライト AS(約12,000円・約3年使用)
安達太良山での紛失は遠征の最中で、翌々日には常念岳を控えていたため、急遽現地で購入したのがこのモデル。当時は膝を痛めて何度か痛みが再発していた時期で、下山時に膝へいく衝撃を少しでも緩和する「ショック吸収の道具」としてストックに頼っていました。引退理由は、転倒したときの衝撃で少し曲がってしまったこと。しばらくは使えましたが、使いづらくなり、持ち手もボロボロになっていたため買い替えました。
3本目:2本目と同じLEKI レガシーライト AS(現在4年目)
3本目は迷わず同じモデルをリピート。現在4年目で、持ち手が一部剝がれてきましたが、問題なく使えています。「同じものをもう一度買った」——これが私にできる最も正直な評価かもしれません。

いま使っているストックの正直レビュー|LEKI レガシーライト AS
2本+4年使い込んだLEKI レガシーライト ASを、良い点も値段なりの点も隠さずレビューします。

良い点|必要十分な機能と「気を使わない」気楽さ
- レバー開閉だけで長さ調整が簡単。しかも緩みにくい。昔使っていたモンベルはレバーが緩くなることが多く、軽い衝撃だけで伸ばしたストックが縮んでしまうことがよくありました。LEKIはこれがほとんど起きません。ここは値段相応の差を感じる部分です
- ちょっとした衝撃では曲がらない・折れない。ボディにキズはつくものの、かなり丈夫です
- 値段がそこまで高くないからこそ、岩にぶつけても気にしないでいられる。道具として遠慮なく使い倒せるのは、実は大きなメリットです
値段なりだと感じる点
- 石突のゴム部分(先ゴム)がよく外れる。気づいたら無くなっていることが多く、消耗品と割り切って予備を持つのが前提です
- 重め(2本セットで約500g)。慣れればザックに取り付けても気になりませんが、カーボン製と比べるとはっきり重いです
耐久性の実感|年50座×4年目でまだ現役
現在4年目。前の個体は転倒による曲がりで約3年で引退しましたが、今の個体はまだ問題なく使えています。私の使い方は年間50座、うち9割の山行にストックを携行(実際に使うのは2割程度、冬場は常時使用)。この頻度で4年もてば、コスパとしては十分すぎる結果です。

実戦でどう役立ったか|「使わない主義」の私が助けられた場面
実は私は、普段はトレーニングも兼ねてストックを使わずに歩き切るのが自分ルールです。それでも9割の山行で携行するのは、「使ってよかった」場面を何度も経験しているからです。
渡渉:川底に「3本目・4本目の足」を作れる
石伝いに川を渡るとき、ストックを川底に支えとして突くと、ない状態と比べて圧倒的な安心感があります。前日の雨で増水した川を、やむなく靴を脱いで渡渉したこともありますが、2本足だけで進むよりも明らかに安定して歩けました。ダブル使用の真価が最も出る場面です。
下山:膝への衝撃をストックに逃がす
段差のある下りで、足を置く前にストックを先に配置する。これだけで荷重がストックに分散され、足——特に膝への負担が大きく減ります。膝痛を抱えていた時期は、この使い方に本当に助けられました。
ロングコース:序盤から使って筋力を温存する
超長丁場の山行では、あえて序盤からストックを使って足の筋肉を温存します。最近では、寝不足で体調が上がらないまま標準コースタイム12時間級に挑んだ高嶺の山行で、序盤からストックを投入。下山時の滑りやすい区間でも安定感を高めてくれて、「使わない主義の人も、ザックに忍ばせておく価値がある」と再認識しました。

3本使い潰して分かった「壊れる場所」と選び方
先に傷む・壊れるのはここ
カタログには載っていない、実際にストックが傷んでいく順番です。

- 石突の先ゴム:壊れる前に「失くす」。頻繁に交換するので、結果的に常に新しい状態です。予備必携
- シャフトの曲がり:足やストックを滑らせた拍子に、まっすぐでない状態のストックへ体重が乗ると曲がります。曲がると伸縮パーツに不具合が出て、長さ調整がいびつになることも。私の2本目の引退理由はこれでした
- グリップ(持ち手):摩擦が激しく、ボロボロに劣化しがち。機能には影響しにくいですが、見た目と握り心地は確実に落ちていきます
- ボディのキズ:岩にぶつけるなどで確実に増えます。ただのキズなら実用上は問題なし
- ロック機構:緩むことはあっても(特にモンベル時代は多かった)、ここ自体が壊れたことはいまだにありません
つまり、先に死ぬのは「先ゴム」と「グリップ」、致命傷になるのは「曲がり」。高級モデルを買っても先ゴムは失くすしグリップは削れます。ここにお金をかける意味は薄い、というのが3本使った実感です。
チェックすべきポイント
- 2本セット(ダブル)で使えるか:最重要。I型を2本、が基本形です
- ロック方式:レバー式(外付けロック)が調整しやすく、緩みにも気づきやすい。安価モデルはレバーが緩みやすい個体があるので、ここは品質差が出ます
- 重量:アルミで2本500g前後が標準。軽さに価値を感じるならカーボンですが、価格は跳ね上がります
- 収納長:ザックに付けて歩く時間が長い人ほど重要。短くたためるほど取り回しが楽です
- グリップ:消耗品と割り切る。高級素材より「握って違和感がないか」で十分
安いI型で十分な人/上位モデルを検討すべき人

1万円前後のI型で十分な人
- 日帰り登山が中心の人
- ストックの使用頻度が低め(お守り的に携行する)の人
- まずストックを試してみたい人。岩にぶつけても惜しくない価格は、それ自体が機能です
上位モデル(カーボン等)を検討すべき人
- テント泊縦走などロング山行が多い人(軽さの恩恵が大きい)
- 毎週のように山に行き、常時ストックを使う人
- 装備全体の軽量化を進めている人
これから買うなら:後継モデル「レガシーライト PRO AS」
ここまでレビューしてきた私のレガシーライト ASは、現在は生産終了となった旧モデルです。現行モデルは後継の「LEKI レガシーライト PRO AS」に切り替わっています。
私はPRO ASは未使用なので、使用感を語ることはできません。ただスペックを見ると、旧モデルからコンパクト・軽量化されたのが最大の進化点。この記事で「値段なりの点」に挙げた“2本で約500gの重さ”がまさに改善された方向で、4年使った身としては素直にうらやましい進化です。
レバー式ロックの扱いやすさや「気兼ねなく使い倒せる価格帯」という本質は後継にも引き継がれています。この記事の使用感は旧モデルのものという前提のうえで、これから買うなら現行のPRO ASが選択肢になります。
まとめ|ストックは「ダブルで使う」が9割
3本のI型ストックを使い潰してきた経験のまとめです。
- 日帰り中心なら1万円前後のI型で十分。ただし2本セット(ダブル)使用だけは妥協しない
- 先に傷むのは先ゴムとグリップ(=消耗品)。致命傷は転倒時の曲がり
- ロック方式はレバー式が扱いやすい。安価モデルとの品質差が出やすいのもここ
- 真価が出るのは渡渉・下山・ロングコースの筋力温存。「使わない主義」でも携行する価値あり
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