【笹山・広河内岳・農鳥岳】車中泊前泊で登る百高山 日帰り周回ガイド|笹山サーキット・山梨

山梨県早川町の奈良田を起点とする通称「笹山サーキット」は、笹山(黒河内岳・2,733m)から白河内岳・大籠岳・広河内岳をたどり、白峰三山の南端・農鳥岳(3,026m)へと続く南アルプス白峰南嶺の稜線を、ぐるりと周回するロングルートです。笹山・大籠岳・広河内岳の3座が日本百高山に数えられ、笹山は山梨百名山の難関「四天王」の一座としても知られています。

周回の行動時間は休憩込みで約13時間、距離は約25km、累積標高は約2,800m。日帰りで歩き切るには、夜明け前のスタートが欠かせません。そこで私は登山口の奈良田駐車場で前泊(車中泊)し、朝4時に歩き始めました。

この記事では、登山・車中泊歴10年以上のソロ登山者の視点で、笹山サーキットのコース・前泊にちょうどいい車中泊スポット・使った装備・下山後の温泉まで、実際に歩いた記録をもとにまとめます。

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目次
項目内容
主な山と標高笹山(黒河内岳)2,733m / 白河内岳 約2,813m / 大籠岳 2,767m / 広河内岳 2,895m / 農鳥岳 3,026m
所在地山梨県南巨摩郡早川町(稜線は静岡県境・南アルプス/白峰南嶺)
山のリスト日本百高山(笹山・大籠岳・広河内岳・農鳥岳)/笹山は山梨百名山「四天王」の難関
難易度上級(累積標高約2,800m・行動時間 標準約16時間45分/実測約13時間・エスケープルートに乏しい)
コースタイム目安(周回)標準 約16時間45分 ※コースタイム表を参照
距離/累積標高約25.8km / 累積標高 約2,800m
ベストシーズン7月〜10月

笹山サーキットのキャラクター

笹山サーキットの魅力は、なんといっても静かな百高山を一度に3座(+農鳥岳)踏める周回ルートであること。笹山までの登りは標高差2,000mの長い急登で展望に乏しいものの、笹山北峰から先は一転して360度の展望が広がる稜線漫歩となり、北岳・間ノ岳・塩見岳・富士山を眺めながら歩けます。人気の白峰三山縦走路から一本外れているため人が少なく、静かに歩きたい中〜上級者向けの一座です。

起点となる奈良田駐車場へは、中部横断自動車道・下部温泉早川IC方面から国道52号〜県道37号(南アルプス街道)を経由してアクセスします。奈良田までの道路は全面舗装で、ダート区間はありません。道幅が狭くなる区間は一部ありますが、落石に注意すれば普通車でも問題なく走行できます。

駐車場は120台ほど停められる無料の広い駐車場で、ウォッシュレット対応の24時間トイレも完備。傾斜もなく、前泊の車中泊にも向いています。駐車場の詳しい設備や静かさは、別記事に詳しくまとめています。

何時までに着くか(満車リスク)

奈良田駐車場は白峰三山縦走のバス発着地でもあり、夏山シーズンの週末や連休は争奪戦になります。私が訪れた7月上旬の平日でも、前日18時半の時点で6割ほどが埋まっていました。確実に停めて前泊するなら、前日の夕方までに到着しておくのがおすすめです。

笹山サーキットは早朝スタートが前提のロングルート。前夜に登山口周辺で車中泊しておくと、体力にも時間にも余裕を持って周回できます。私が実際に使った前泊スポットを紹介します。

【1】奈良田駐車場(登山口)
移動の手間がゼロで、傾斜なし・24時間トイレあり・全キャリア電波良好と、前泊環境として文句なし。夜間の通行もほとんどなく静かで、私の第一候補です。

【2】道の駅 みのぶ 富士川観光センター(車で約40分)
奈良田へ向かう国道52号沿いにある道の駅。買い出しや食事を済ませてから山へ向かいたい場合の中継地点として便利です。静かさ重視で登山口直前まで詰めたいなら奈良田駐車場、設備や買い出しの利便性を取るなら道の駅みのぶ、と使い分けるとよいでしょう。

総合的には、静かさ・移動のしやすさ・トイレ環境のバランスから、前泊は奈良田駐車場が第一候補。前日に買い出しや温泉を楽しみたい場合だけ、道の駅みのぶを組み合わせるのがおすすめです。

ここからは、2026年7月上旬に実際に歩いた笹山サーキットの記録を、コースの様子とあわせて時系列で紹介します。

ルート全体図

笹山サーキット(奈良田駐車場→笹山→白河内岳→大籠岳→広河内岳→農鳥岳→大門沢)のルート全体図。大門沢の下山路に道迷い注意ポイントを記載。国土地理院 地理院タイル(標準地図)を加工して作成
笹山サーキットのルート全体図。オレンジの◆が大門沢の道迷い注意ポイント

奈良田駐車場を起点に、笹山ダイレクト尾根を登って笹山へ。白河内岳・大籠岳・広河内岳と稜線をたどって農鳥岳を往復し、大門沢を下って奈良田へ戻る時計回りの周回です。

笹山サーキットのコースタイム(標準・実測)

標準コースタイムと、当日の実測タイムを区間ごとに並べました。実測は休憩を含んだ実際の通過時刻をもとにしています。

区間標準コースタイム(累計)実測コースタイム(累計)
奈良田駐車場(出発 4時00分)
→ 笹山6時間10分(累計 6:10)4時間10分(累計 4:10)
→ 白河内岳1時間25分(累計 7:35)1時間10分(累計 5:20)
→ 大籠岳35分(累計 8:10)35分(累計 5:55)
→ 広河内岳1時間10分(累計 9:20)1時間05分(累計 7:00)
→ 農鳥岳1時間05分(累計 10:25)1時間05分(累計 8:05)
→ 奈良田駐車場(下山 16時58分)6時間20分(累計 16:45)4時間53分(累計 12:58/休憩込み)

標準コースタイムの合計は約16時間45分。休憩を含めても実測13時間ほどで周回できましたが、これは早朝スタートで各ピークの滞在を短くした結果です。標準タイムで見ればれっきとした1泊向けのロングルートであり、日帰りする場合は相応の体力と、途中で撤退する判断基準を持っておくことをおすすめします。

出発前夜〜当日朝

前泊の前に、往路の途中にある日帰り温泉「甲州鰍沢温泉 かじかの湯」で汗を流してから奈良田駐車場へ。駐車場で車中泊し、当日は3時半起床、4時にスタートしました。奈良田駐車場から吊り橋を渡ると、すぐに笹山の登山口です。

笹山ダイレクト尾根の急登(登山口→笹山)

登山口を過ぎると、初っ端から急登の連続。5時半に水場との分岐に到着しますが、ここから先もひたすら急登が続きます。傾斜が緩む部分もあるものの、基本は長い登りが延々と続く尾根です。

笹山ダイレクト尾根の急登
初っ端から続く急登
笹山ダイレクト尾根の水場分岐
水場との分岐
登山道で出会ったシカ
シカに遭遇

6時50分ごろ、ガレ場のポイントに到着。ガレ場というより登山道が崩壊しているため、迂回して進みます。少し進むと標高2,256m地点。ここからはコケむした樹林帯となり、笹山直下の登りへ。展望はまったくなく、山頂がどこにあるのかも視認できないまま、ひたすら樹林帯を登ります。

標高2256m手前の登山道の崩壊部
道が崩壊した区間
崩壊部を迂回して進んだ先の登山道
崩壊部を過ぎて標高2,256mのポイント
笹山直下のコケむした樹林帯の登り
笹山直下の樹林帯
展望のない笹山直下の樹林帯の登山道
山頂まで展望のない登り

8時10分、笹山(南峰)に到着。木々に覆われ展望は限定的ですが、そこから5分ほど進んだ笹山北峰は360度の大展望。ここまでの長い樹林帯の登りが報われる瞬間です。北岳方面や富士山、これから向かう農鳥岳方面の稜線が一望できます。

笹山(南峰)の山頂
笹山 山頂(南峰)
笹山付近から望む北岳方面の展望
木々の間から北岳方面
360度の展望が広がる笹山北峰の山頂
笹山北峰 山頂
笹山北峰からこれから向かう農鳥岳方面の稜線
これから向かう農鳥岳方面
笹山北峰から望む富士山
富士山も一望

展望の稜線漫歩(笹山北峰→白河内岳→大籠岳→広河内岳)

笹山北峰からは再び樹林帯に入りますが、次第に岩稜帯へと変化し、開けた稜線歩きになります。9時20分に白河内岳に到着。全面素晴らしい展望で、北岳・塩見岳・富士山、北アルプス・中央アルプスまで見渡せました。

白河内岳へ続く岩稜帯の稜線歩き
岩稜帯へと変化する稜線
白河内岳の山頂
白河内岳 山頂
白河内岳から望む北岳方面の展望
白河内岳より北岳方面

9時55分、百高山の大籠岳に到着。ここも申し分ない展望ですが、このあたりから雲が湧き始め、農鳥岳方面を覆い始めます。大籠岳から広河内岳への登り返しがなかなかきつく、11時に広河内岳に到着しました。

百高山・大籠岳の山頂
大籠岳 山頂
大籠岳から見た北岳方面に湧き始めた雲
雲が湧き始めた北岳方面
百高山・広河内岳の山頂
広河内岳 山頂
広河内岳から望む農鳥岳方面の稜線
広河内岳より農鳥岳方面

農鳥岳を往復(広河内岳→大門沢下降点→農鳥岳)

広河内岳から大門沢下降点へ下り、荷物の重さを感じながら農鳥岳へ登り返します。12時5分、農鳥岳に到着。残念ながら北岳方面は完全に雲の中でしたが、白峰三山の一角に立てた満足感がありました。

大門沢下降点の分岐
大門沢下降点の分岐
白峰三山の南端・農鳥岳の山頂
農鳥岳 山頂
農鳥岳山頂からの展望
農鳥岳山頂からの眺め

大門沢の長い下り(農鳥岳→奈良田駐車場)

農鳥岳から大門沢下降点へ戻り、ここから大門沢を下る長い下山にかかります。下山開始してすぐにライチョウに遭遇。別の個体にも出会えて、疲れた足に嬉しいご褒美でした。

大門沢の下山中に出会ったライチョウ
下山中に出会ったライチョウ
大門沢で出会った別の個体のライチョウ
別の個体のライチョウ
渡渉ポイント
渡渉ポイントが多い

大門沢の下りは渡渉を含む長い道のりで、体力と集中力を削られます。最後は吊り橋を渡って、16時58分に奈良田駐車場へ下山。休憩込みで約13時間の長い一日でした。なお、下りの途中で一度道を見失いかけています。詳細は次の章にまとめました。

笹山サーキットを安全に周回するために、実際に歩いて感じた注意点をまとめます。

  • 大門沢の下りは道迷いに注意。下山路の途中に、地図でも「道迷い注意・多発地点」と表示されるポイントがあります。私も正しい方向のピンクテープが気付きにくい位置にあり、そのまま直進して道を見失いました(後続の2人も同じように間違えて進んできました)。事前に地図で道迷いポイント・危険箇所を把握しておけば、より注意を払えたはずです。
  • とにかくロングで急登が長い。笹山までの標高差2,000mの登りは展望がなく、精神的にも消耗します。体力配分を意識し、無理を感じたら引き返す判断を早めに。
  • 大門沢の下りは渡渉あり。沢沿いの下山路には渡渉ポイントが複数あり、増水時は注意が必要です。ストックがあると渡渉や長い下りで脚の負担を減らせます。
  • エスケープルートに乏しい。稜線に出てからは逃げ道が少なく、天候悪化時は判断が難しくなります。行動が長いぶん、早出・早着を徹底しましょう。
  • 単独行はとくに慎重に。登山届の提出、予備食料、モバイルバッテリー、ココヘリ等の備えを。
大門沢の下山路で道迷いが多発するポイント
道迷い多発ポイント
気付きにくい位置に付けられたピンクテープ
気付きにくいピンクテープ

日帰りとはいえ行動時間約13時間・笹山までの標高差2,000mのロングルート。ここでは、この山で実際に役立った装備を紹介します(レインウェアやヘッドランプなど、日帰り登山の標準セットは省略します)。

必須装備

水は多めに。笹山までの尾根には稜線上に安定した水場がなく、行動時間も長いため、アクエリアス500ml×2本と水4Lを持ちました(下山時1.5Lの水あまり)。行動食も、長時間の急登でシャリバテしないよう多めに用意しています。日焼け対策と、稜線の風・ガスに備えた防寒着も必須です。

あると安心だった装備

トレッキングポール(ストック)。大門沢の下りは長く、渡渉する場面も多いため、ストックがあると脚の負担や渡渉時のバランス確保にとても役立ちました。

奈良田周辺には、登山の前後に立ち寄れる日帰り温泉があります。私が実際に利用した2施設を紹介します。

甲州鰍沢温泉 かじかの湯(前泊・往路で立ち寄り)

奈良田へ向かう途中、富士川沿いにある日帰り温泉。洗い場は仕切りがなくシンプルですが、シャワーは湯量・湯温の調整がしやすく、お湯が自動で止まらない仕様で使いやすいのが好印象でした。露天はコンパクトで展望はなく、お湯は40度ほどの適温。平日17時ごろで比較的空いていました。浴室の照明がやや明るすぎるのが好みの分かれるところです。

前泊で立ち寄った甲州鰍沢温泉かじかの湯
かじかの湯

奈良田の里温泉 女帝の湯(下山後・登山口至近)

下山後は、登山口のすぐ近くにある奈良田の里温泉へ。入口の自販機でチケットを買い、改札機のようなゲートを通って入館するシステムです。浴室・洗い場ともに5〜6人分とコンパクト。シャワーは湯量の調整がしやすく、お湯が自動で切れないため使い勝手は良好でした。内湯が2つあり、ひとつはぬるめ、もうひとつはさらにぬるめ。露天はありません。下山後17時半の訪問で、先客は一人だけと静かに浸かれました。

下山後に立ち寄った奈良田の里温泉 女帝の湯
女帝の湯
温泉施設利用シーン営業時間料金(大人)
甲州鰍沢温泉 かじかの湯前泊(往路で立ち寄り)10:00-20:00(土日祝は21:00まで)/木曜休730円
奈良田の里温泉 女帝の湯(登山口至近)下山後9:00-19:00(最終受付18:30)/年中無休 ※12〜6月の木曜は無人営業700円

笹山サーキットは、笹山・大籠岳・広河内岳の百高山3座に農鳥岳まで加えた、静かで歩きごたえのある周回ルートです。笹山までの標高差2,000m・行動時間約13時間と体力は必要ですが、笹山北峰から先の展望稜線は苦労に見合う爽快さ。前泊で早朝スタートすれば、日帰りでも余裕を持って周回できます。奈良田駐車場での車中泊前泊と組み合わせて、静かな南アルプスの稜線を楽しんでみてください。

※ 本記事は筆者の登山時点での体験・情報をもとにしています。登山道・駐車場・施設の状況は変わることがあります。入山前に最新情報(自治体・山小屋・YAMAP等)を必ず確認し、天候・体力に応じた無理のない計画で、自己責任のもと安全な登山をお楽しみください。

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