高嶺(たかね)は、南アルプス・鳳凰山から甲斐駒ヶ岳へと延びる早川尾根上にあるピークです。標高2,779m、日本百高山に数えられ、何といっても北岳の絶好の展望台として知られる一座。鳳凰三山の陰に隠れがちですが、リスト踏破派なら外せない山です。
青木鉱泉からのルートは累積標高2,000m超・標準コースタイム12時間級のロングコース。日帰りで挑むなら早朝出発が絶対条件です。私は車中泊前泊で、前夜のうちに麓の道の駅まで移動して仮眠を取り、朝5時35分に歩き始めました。
この記事では、車中泊歴10年のソロ登山者の視点で、高嶺の前泊スポット・青木鉱泉までの悪路と駐車場・実際のコースタイム・2度の道迷いポイントまで、日帰り登山に必要な情報をまとめています。

- ブログ管理人の「いち」です
- 登山・車中泊歴10年以上
- 登山前泊に車中泊し、夜明けとともに行動するスタイル
- 愛車はフリードプラス
- ブログでは、山歩きや車中泊について発信しています
高嶺の基本情報
| 標高 | 2,779m |
| 所在地 | 山梨県(南アルプス・早川尾根上/登山口は韮崎市・青木鉱泉) |
| リスト分類 | 日本百高山 |
| 難易度 | 中級〜上級(高嶺ピストンでもコース定数47「きつい」・YAMAP) |
| コースタイム目安 | 標準タイム 12時間07分(青木鉱泉〜地蔵岳〜高嶺 往復・YAMAP) |
| 距離・累積標高 | 約16.0km/のぼり約2,070m |
| ベストシーズン | 5月〜11月上旬(アクセス林道は12月〜4月下旬 冬期閉鎖) |
青木鉱泉へのアクセスと駐車場
林道はすれ違い困難・落石多め。ナビの所要時間を当てにしない
青木鉱泉までの約9kmはすれ違い困難な狭い道路が続きます。路上には落石も多く、夜間や雨天時は特に神経を使う区間です。さらに、途中の約1km区間はかなりの悪路。車高の低い車は底擦りに注意してください。青木鉱泉手前のラスト500mも未舗装路です。
すれ違いポイントを探しながらの走行になるため、所要時間はナビの表示より長めに見積もるのが無難。暗いうちの林道走行を避ける意味でも、前泊で麓まで近づいておく価値が大。
青木鉱泉駐車場(1日800円・未舗装)
駐車場は未舗装で、料金は1日800円。青木鉱泉の受付で支払うシステムです。受付が不在の時間帯は、備え付けの封筒に「氏名・車のナンバー・車の特徴」を書き、800円を入れてポストに投函します。早朝出発の登山者はこの封筒方式になることが多いので、小銭を用意しておくとスムーズです。
駐車場にはトイレと手洗い場があり、出発前の準備には十分。標高は約1,090mです。




何時までに登山口に着くべきか
標準コースタイム12時間級なので、日帰りなら夜明けとともに歩き出したいところ。私は5時26分に駐車場到着、5時35分に出発しました。駐車場は4カ所に分散されていて、うち宿に一番近い駐車場が満車となっていました。宿から離れた場所にある駐車場は十分広いので、土日祝日でも満車になることはなさそう。
高嶺登山の前泊におすすめの車中泊スポット
前述のとおり青木鉱泉への林道は夜間走行を避けたいので、前泊は麓の道の駅が現実的です。私が実際に使ったスポットと、いま選び直すならこちら、という2箇所を紹介します。
【実際に使った】道の駅 はくしゅう
私が前泊で使ったのは道の駅 はくしゅう。スーパー隣接で買い出しに便利、無料の水汲み場もあります。ただ、正直に書くと——国道20号の走行音と大型車のアイドリング音で熟睡できず、当日は寝不足のまま登ることになりました。この寝不足が、後述するルート変更につながります。特に大型車が道の駅に往来するときのアイドリングの影響が大きく、浅い眠りを繰り返すことに。

【いま選ぶならこちら】道の駅 こぶちさわ
同じ北杜市内なら、温泉併設・標高995mで夏も涼しい道の駅 こぶちさわのほうが静かに眠れます。青木鉱泉までの距離は少し延びますが、ロングコース前夜の睡眠の質を優先するなら、次に高嶺へ登るときは迷わずこちらを選びます。

実際に登ったコース体験記(青木鉱泉〜地蔵岳〜高嶺)
登山日:2026年6月10日(くもり時々晴れ)
当初の計画は青木鉱泉→地蔵岳→高嶺→観音岳→薬師岳→中道で青木鉱泉に戻る鳳凰三山周回でした。しかし前夜の寝不足で体調が上がらず、高嶺で引き返すエスケープルート(ピストン)に変更。結果はYAMAP実測で総行動9時間15分(休憩1時間11分込み)・16.0km・のぼり2,068mでした。
出発前夜と当日朝の動き
前夜は尾白の湯で汗を流してから道の駅 はくしゅうで仮眠。21時30分には就寝したものの、大型車のアイドリング音などで度々目を覚まし、寝不足状態で4時に起床。当日は4時30分に道の駅出発し、5時15分に青木鉱泉駐車場へ到着。封筒に駐車料金を入れて5時35分に出発しました。


コースタイムまとめ(実測)
| 区間 | 私の実測(2026/6/10) |
|---|---|
| 青木鉱泉 5:35発 → 鳳凰小屋 9:02着(ドンドコ沢) | 3時間27分 |
| 鳳凰小屋 9:04発 → 地蔵岳 9:39着 | 35分 |
| 地蔵岳 9:51発 → 赤抜沢ノ頭 → 高嶺 10:30着 | 39分 |
| 高嶺 10:56発 → 青木鉱泉 14:47着(下り) | 3時間51分 |
| 合計(休憩込み) | 9時間15分(標準タイム12時間07分・平均ペース150〜170%) |
登り①:渡渉と樹林帯、そして2つの道迷いポイント(5:35〜6:45頃)
序盤は沢沿いの樹林帯。渡渉ポイントを越えながら高度を上げていきます。この序盤に、後述する道迷いポイントが2箇所あるので要注意(詳細は「ヒヤリとした場面」で)。



登り②:名瀑が続くドンドコ沢(6:45頃 南精進ヶ滝〜8:20 五色の滝)
まず、3つのポイントの位置を地図で確認してください。①②は登りのドンドコ沢沿い、③は下山時の鳳凰小屋のすぐ先です。

ドンドコ沢ルートの魅力は何といっても滝群。南精進ヶ滝、その後も鳳凰の滝・白糸の滝と続き、8時20分に五色の滝へ。急登の連続ですが、滝が良いペースメーカーになってくれます。五色の滝は滝下から見上げる圧倒的なスケールとダイナミックさが魅力。登山道から少し離れた場所にありますが、ぜひ立ち寄りたいスポットです。


登り③:鳳凰小屋から賽の河原の急登、地蔵岳へ(9:02〜9:39)
9時02分に鳳凰小屋着。ここから地蔵岳直下は、足を取られるザレ場の急登です。一歩ごとに砂に沈む登りをこなすと、9時39分、オベリスクのそびえる地蔵岳に到着。山頂部にはお地蔵様が並ぶ賽の河原が広がります。
このザレ場が青木鉱泉ルートの核心部といってもいい過酷さ。標高差約200mの登りは、まさに心臓破りの急登です。



登り④:赤抜沢ノ頭から高嶺へ。北岳の大展望(9:51〜10:30)
地蔵岳から赤抜沢ノ頭に上がると、観音岳へ続く白い稜線と、これから向かう高嶺への稜線が一望できます。最後の登りをこなして10時30分、高嶺山頂へ。晴れていれば正面に北岳、その右に仙丈ヶ岳・甲斐駒ヶ岳の大パノラマが広がります。残念ながらこの日は雲が多く、展望はイマイチ。山頂では30分ほど休憩しました。





下り:周回を断念してピストンに変更(10:56〜14:47)
本来はここから観音岳・薬師岳へ縦走して中道で下る周回の予定でした。しかし寝不足の影響で体が重く、「この体調で残り標準CT6時間超の縦走は危険」と判断して、来た道を戻るエスケープルートを選択。結果的にこの判断が正解で、下山中も集中力の低下を実感する場面がありました(次項)。下りは3時間51分、14時47分に青木鉱泉へ帰着しました。
ヒヤリとした場面:2度の道迷いと、疲労時の分岐ミス
① 倒木の道迷いポイント(序盤2つ目の渡渉のすぐ先)
道なりにまっすぐ進むと倒木があり、倒木を「避けて」進むと間違った道に入ってしまいます。正解は倒木を「またいで」直進。ピンクテープが倒木そのものに巻いてありますが、よく見ていないと見過ごします。

② ロープの道迷いポイント(鳳凰の滝分岐のすぐ先)
正面にロープが張ってあり、その先にも道が見えるため、ロープを「くぐって」進むと間違い。ここはロープを「避けて」進むのが正解です。

厄介なのは、①は「障害物をまたいで直進」が正解、②は「障害物を避ける」が正解と、状況によって判断が真逆になること。「道なりに進んでいるのに何か怪しい」と感じたら、迷わず地図アプリを開いて現在地を確認してください。
③ 下山時、鳳凰小屋からの分岐ミス
寝不足の影響か、下山時は明らかに集中力が落ちていました。鳳凰小屋から青木鉱泉へ下る道を間違え、別の登山口へ下るルートに入ってしまい、途中の道標でようやく気づいて引き返すことに。疲れているとき・集中力が切れかかっているときこそ、分岐では立ち止まって地図を確認すべし——身をもって学んだ教訓です。
ソロ・中年登山者が気をつけたいこと
体力配分と「引き返す勇気」
今回、私は高嶺の山頂で周回続行を断念しました。判断材料は「寝不足による体の重さ」と「残り区間の標準CT」。今回の高嶺ピストンですらコース定数47の「きつい」ルートで、鳳凰三山まで周回すれば負荷はさらに上がります。体調が万全でないなら、高嶺ピストンへの切り替えは合理的なエスケープになります。
ここで引き返すのはもったいない、自分との約束を違えるなどけしからん!などと高嶺山頂で葛藤しましたが、集中力低下による滑落やケガのリスクを考慮できる冷静さを保てていたことが、結果的に無事に下山できたことに寄与したと思っています。
エスケープルートの選択肢
このルートは高嶺(または地蔵岳)で引き返せば、登ってきた道をそのまま戻れるのが強み。周回にこだわらなければ、体調に応じて行動時間を2〜3時間単位で短縮できます。
高嶺で実際に使った装備
一般的な装備リストではなく、私がこの山で実際に使ったものだけを紹介します。
必須装備
水分・食料:水4リットル+アクエリアス500ml、パン3個、行動食はカロリーメイト・グミ・カルパス。標準コースタイム12時間級のロングコースなので、水は多めに見積もりました。当日は曇りがちだったこともあり、結果的に水は2リットル余りましたが、晴天で気温が上がればちょうど良かったはず。荷物を軽くしたいコースですが、ここで水を削るのはおすすめしません。
あると安心だった装備
ストック:普段はトレーニングも兼ねて、ストックを使わずに下山まで歩き切るのが自分ルールです。ただ今回は寝不足で体調が上がらず、体力温存を優先して序盤から使用。結果的にこれが正解で、下山時は滑りやすい箇所が多く、安定感を高める役割も十分に果たしてくれました。「使わない主義の人も、ザックに忍ばせておく価値がある」と実感した山行です。
もうひとつ、装備というより前夜の睡眠環境も実は装備のうち。今回前泊した道の駅 はくしゅうは駐車場に傾斜があり、車中泊の寝心地に響くポイントでした。私はふだん、厚めのマットレスの下にサーマレストのZライトソルを重ねて、段差や傾斜を調整する役として使っています。1枚でさっと敷ける手軽さがあるので、仮眠だけの夜にはこれ単体でも十分。登山用マットとしても使える兼用ギアです。

※ レインウェア・ヘッドランプなどの基本装備は、日帰り登山の標準セットなのでここでは省略します。
下山後の温泉|尾白の湯とむかわの湯、実際に入って比較
今回の山行では、前夜に「尾白の湯」、下山後に「むかわの湯」と、北杜市の2つの日帰り温泉を実際に利用しました。料金はどちらも大人830円(北杜市民以外)。結論から言うと、同じ830円ならコスパは尾白の湯に軍配です。
【おすすめ】甲斐駒ヶ岳 天然温泉 尾白の湯
露天風呂が名物の「赤湯」と透明の湯の2種類あり、広々として非常に開放的。洗い場には背の低い仕切りがあって個々のスペースもかなり広く、シャワーは湯量を微調整しやすいうえ自動で止まらないタイプで、使い勝手が抜群です。お湯はややぬるめで、ロング山行後に長く浸かるのに向いています。注意点はドライヤーがダイソンの有料のみ(5分100円)であることくらい。

南アルプス釜無川温泉 むかわの湯
露天風呂は1つで、こちらもお湯はやや ぬるめ。洗い場に仕切りがあり、シャワーは湯量調整しやすく自動で止まらない仕様で使いやすいです。設備は十分ですが、露天の開放感では尾白の湯が一枚上でした。

まとめ|高嶺は車中泊前泊+睡眠の質が攻略のカギ
高嶺は、北岳の大展望を望める日本百高山。標準CT12時間級のロングコースだからこそ、前夜にどこで・どれだけ眠れるかが攻略のカギになります。私は寝不足の影響で鳳凰三山周回を断念し、道迷いも経験しました。前泊スポットは「静かに眠れること」を最優先で選んでください。
※ 本記事は筆者の登山時点(2026年6月)での体験・情報をもとにしています。登山道・駐車場・施設の状況は変わることがあります。入山前に最新情報(自治体・山小屋・YAMAP等)を必ず確認し、天候・体力に応じた無理のない計画で、自己責任のもと安全な登山をお楽しみください。
▼ あわせて読みたい関連記事



コメント