登山用のヘッドライトを選ぼうとすると、ルーメン・照射距離・IPX4…と見慣れない言葉が並びます。どれも大事そうに見えて、結局どれを基準にすればいいのか分からなくなります。
ですが、選び方はそれほど複雑ではありません。「暗いなかを何時間歩くのか」——ここさえ決まれば、必要なヘッドライトはほぼ絞り込めます。
そこでこの記事では、まず診断であなたのタイプを決め、次にそのタイプに向いたモデルを紹介するという順番で進めます。自分のタイプが分かれば、その章だけ読んでいただければ大丈夫です。

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まずは診断|あなたはどのタイプ?
さっそく、あなたに必要なヘッドライトを絞り込みましょう。答えるのは2つの質問だけです。
ポイントは「暗いなかを歩く時間」——明るさでも価格でもありません。同じヘッドライトでも、1時間しか使わない人と6時間使う人では、正解がまったく変わるからです。

タイプが決まったら、次の章で共通の基礎知識を3つだけおさえてください。そのうえで、自分のタイプの章に進めば準備完了です。すぐ読みたい方は、下のリンクから飛べます。
- タイプ① はじめての1本|価格と無難さで選ぶ
- タイプ② 山小屋+ご来光|軽さ最優先
- タイプ③ 早朝スタート|軽さ+確実な2時間
- タイプ④ 深夜発ロング|電池を切らさない設計
これだけは押さえたい3つの用語
カタログには専門用語が多数出てきますが、買うモデルが変わるほど重要なのは、次の3つだけです。残りの用語は、記事のなかで実際に出てきたときにその都度説明します。
①ルーメン(lm)= 光の量
電球からどれだけの光が出ているかを表す数字で、大きいほど明るくなります。
とはいえ「400ルーメン」と言われても、それがどのくらいなのか想像しにくいはずです。身近なものと並べると、こうなります。

見ていただくと分かるとおり、登山道を歩くだけなら200ルーメンで十分です。1000ルーメン級が必要になるのは、分岐を探すときなど、ごく短い時間に限られます。
つまり最大ルーメンの大きさで選ぶ意味は薄いということです。むしろ大事なのは、次に説明する「その明るさが何時間もつか」のほうです。
②点灯時間(ランタイム)= ここが最大の落とし穴
その前に、モードの話をしておきます。ヘッドライトには明るさの段階(モード)があり、多くのモデルはハイ(いちばん明るい)/ミドル(中くらい)/ロー(いちばん暗い)の3段階です。明るくすればよく見えますが、そのぶん電池は速く減ります。そこで、場面に応じて切り替えながら使うのが基本になります。
ここで注意したいのが、カタログの「最大○時間」をそのまま信じないこと。あの数字は、たいていローモードで測った値だからです。
1つのモデルでモードごとに並べると、その差は一目瞭然です。

ですから見るべきは最大値ではなく、中間モードで何時間もつか。この記事の比較表も、すべて中間モードの数字で揃えています。
そして「何時間もつ必要があるか」は人によって違い、足りない場合に備える方法が、3つめの用語につながります。
③電源の種類= 充電池・乾電池・両対応
地味に見えますが、ライトを点けて歩く時間が長い人ほど、重視したいポイントです。電池が尽きたときにその場で入れ替えて使い続けられるかが、方式によって変わるからです。

点けて歩くのが1〜2時間なら、充電池だけで足ります。しかし5時間、6時間と長くなるほど、山のなかで電池を入れ替えられることが重要になります。
押さえておきたい必要な用語は以上となります。ここからは、診断で出たタイプごとに見ていきましょう。
タイプ①:はじめての1本|価格と無難さで選ぶ
登山用品店やガイドブックで「日帰りでもヘッドライトは必ず持つように」と言われ、とりあえず1本そろえておきたい——そんな方に向けた章です。
下山が予定より遅れたときや、道に迷って日没を迎えたときのための保険なので、ふだんは使わないまま持ち歩くことになります。だからこそ、高いモデルを買う必要はありません。
ただし安すぎる無名モデルは避けてください。明るさの表示が実態と違ったり、電池の持ちが極端に短かったりします。いざというときに使う道具なので、ここは実績のあるメーカーから選びましょう。
登山用ヘッドライトの定番メーカーは、次のあたりです。はじめてなら、この中から選んでおけばまず失敗しません。
- ペツル(Petzl):フランス。登山用ヘッドライトの世界的な定番
- ブラックダイヤモンド(Black Diamond):アメリカ。クライミング用品の老舗
- レッドレンザー(Ledlenser):ドイツ。コスパと防水性能に強み
- ナイトコア(NITECORE):軽量モデルに定評
- モンベル(mont-bell):日本。国内の店舗で実物を試せる
価格帯としては、6,000〜7,000円台で十分な性能が手に入ります。
価格とメーカーのほかに、もう一つ確認しておきたいのが防水性能です。カタログでは「IPX4」「IP68」のように表記され、数字が大きいほど水に強いことを表します。登山でどこまで必要かを図にまとめました。

登山なら IPX4 が最低ライン、IP67 まであれば十分です。
この条件で絞ると、次の2モデルが候補になります。
Ledlenser HF4R Core|72gで500ルーメン、防水も最強クラス
6,600円という価格ながら72gと軽く、最大500ルーメン。さらにIP68の完全防水を備えています。先ほどの図でいえば最上位です。
- ブースト500lm/パワー300lm・2.5時間/ミドル120lm・5時間/ロー20lm・35時間
- IP68の完全防水。2mの落下試験もクリア
- マグネット式USB充電(約3時間)。赤色灯あり
- 乾電池は使えない(充電池のみ)
- 製品登録で保証が7年に延長できる
Black Diamond スポット400|乾電池が使えるので電池切れの不安がない
こちらは単4電池3本で動くモデルです。約6,800円とほぼ同じ価格帯。
先ほどの「電源の種類」で説明したとおり、コンビニで買える電池に入れ替えれば、そのまま使い続けられるのは大きな安心材料です。使う頻度が低く、いざというときに確実に点いてほしい初心者ほど、この方式は向いています。
- ハイモードで6時間超、ローなら24時間超
- 照射距離はハイ100m/ロー12m
- 防水IPX8。赤色灯あり、無段階調光に対応
- 単4×3本/専用充電池BD1500のどちらでも使える
2つの選び分け:軽さと防水を取るならHF4R Core、電池切れの不安をなくしたいならスポット400。どちらを選んでも失敗しません。
では次に、実際に暗いなかを歩く前提の使い方を見ていきます。まずは最も短い、1時間以内のケースからです。
タイプ②:山小屋+ご来光|使うのは1時間以内
山小屋に泊まり、日の出を見るために明け方前に出発する——この使い方なら、暗いなかを歩くのは長くても1時間程度です。
先ほど「カタログの最大○時間は、いちばん暗いモードの数字」だとお伝えしました。裏を返すと、使うのが1時間なら、どのモデルを選んでも点灯時間は足ります。ここは悩まなくて構いません。
代わりに重視したいのが軽さです。ザックに入れっぱなしにしても負担にならず、小屋のなかで手元を照らすのにも使いやすくなります。
そしてもう一つ、この使い方だからこそ役立つ機能があります。赤色灯です。山小屋の大部屋やテント場では、消灯後や早朝の暗いなかで身支度をすることになります。白い光は周りで寝ている人の顔を照らしてしまいますが、赤い光ならその心配がありません。

この条件で絞ると、次の2モデルが候補になります。
NITECORE NU21|44g。つけていることを忘れる軽さ
わずか44g、最大360ルーメン。ルーメンの図で見たとおり200ルーメンあれば一般的な登山道は歩けるので、明るさは必要十分を上回っています。
電源は内蔵バッテリーのみで、最大の360ルーメンを使い続けられる時間は長くありません。深夜発のロングルートには向きませんが、1時間以内の使用なら、この軽さがそのまま武器になります。弱点が弱点にならない、という選び方です。
- 最大360lm。明るさは4段階+赤色灯
- 内蔵バッテリー(USB-C充電・約1時間半でフル)。乾電池は使えない
- 防水IP66。ザック内での誤点灯を防ぐロックアウトモードつき
NITECORE NU25 MCT UL|46gで400ルーメン。軽さと明るさの両立
「もう少し明るさと配光に余裕がほしい」という方にはこちらです。実測46gでありながら最大400ルーメン。NU21よりわずか2g重いだけで、スポットとワイドを兼ねた配光になります。
- 400lm/2時間40分、6lm/45時間
- USB-C充電。赤色灯あり。防水IP66
- 内蔵電池は取り外し不可
- ヘッドバンドがゴムコード式(布バンド仕様は約10g増)
次は、ライトを点けて歩く時間がもう少し伸びるケースです。
タイプ③:早朝スタート|明け方前の1〜2時間を歩く
暑さを避けて涼しいうちに登り始め、昼前後には下山する——夏の登山では最も一般的なスタイルかもしれません。
点けて歩くのは1〜2時間。タイプ②より少し長いだけに見えますが、ここで「カタログの最大時間はいちばん暗いモードの数字」という話が問題になります。カタログの最大時間ではなく、中間モードで3時間以上もつかを確認してください。必要時間の1.5倍を目安にすると安心です。
もう一つ、この時間帯ならではの注意点があります。空が白み始める前は、まだ完全な暗闇です。樹林帯の分岐やテープを見落とすと、明るくなるまで気づけないことがあります。
そこで知っておきたいのが配光——光の広がり方です。手前を広く照らすタイプと、遠くを細く照らすタイプがあり、道や目印を探すときに見え方が変わります。

NITECORE NU25 MCT UL|46gで2時間40分。この用途にちょうどいい
タイプ②でも挙げたモデルですが、この使い方にもよく合います。最大の400ルーメンで使い続けても2時間40分もつので、明け方前の1〜2時間なら余裕をもって使えます。
Ledlenser HF4R Core|中間モードなら5時間。余裕を持ちたい人に
もっと余裕がほしい方にはこちらです。120ルーメンのミドルモードで5時間もちます。
ルーメンの図で見たとおり、樹林帯を淡々と登る場面では100ルーメン前後で十分。つまり1〜2時間の使用なら、電池残量をまったく気にせずに済みます。IP68の防水も、朝露で濡れる時間帯に歩くこの使い方と相性が良いです。
そして最後が、ヘッドライト選びが最もシビアになる使い方です。
タイプ④:深夜発ロング|合計5〜6時間ヘッドライトを使う
深夜1〜3時に登り始め、日の出まで3〜4時間。下山が長引けば日没後にもう1〜2時間——合計5〜6時間になる使い方です。
ここまで来ると、考え方そのものが変わります。1本のバッテリーで完走できない可能性を前提にする必要があるからです。
実際、私も北アルプスの山行で、行動の途中で電池を交換しています。

このとき助けられたのが、乾電池が使えるモデルだったことです。先ほど「山のなかで電池を入れ替えられるかどうかで差がつく」とお伝えしましたが、まさにその場面でした。予備を1本ポケットに入れておけば、暗闇のなかでも数十秒で明かりが戻ります。充電池しか使えないモデルだと、モバイルバッテリーにつなぎながら歩くことになります。
もう一つ、長時間行動する人ほど確認しておきたいのが誤点灯ロックです。ザックの中でボタンが押されて点灯し続け、登山口に着いたときには電池が空——というのは実際によくある失敗です。長時間使う予定なら、出発時点で満充電であることが大前提になります。

Black Diamond スポット400|78gでハイ6時間超、しかも乾電池対応
この条件を最もバランス良く満たすのがこれです。タイプ①でも挙げましたが、78gの軽さでハイモード6時間超という数字は、この使い方でこそ真価を発揮します。
- ハイ6時間超/ロー24時間超、照射距離ハイ100m
- 単4×3本/充電池BD1500の両対応
- 防水IPX8、赤色灯、無段階調光
Petzl ACTIK CORE|スタンダード100ルーメンで10時間
もう一つの本命がこちらです。最大600ルーメンですが、注目すべきはスタンダードモード(100lm)で10時間という点。
ルーメンの図で見たとおり、100ルーメンは樹林帯なら十分に歩ける明るさです。その明るさで10時間もつということは、5〜6時間の行動なら交換なしで完走できる可能性が高いということになります。
- COREバッテリー時:エコ7lm/100時間、スタンダード100lm/10時間、マックス600lm/2時間
- 単4電池3本との両対応(乾電池時は最大450lm・重量99g)
- 赤色灯(点灯・点滅)搭載、防水IPX4
そのほかの選択肢
上の2つで多くの場合は足りますが、参考までにあと2モデル挙げておきます。
Ledlenser MH5(94g・400lm・8,800円)は、私が実際に使っているモデルです。単3アルカリ電池1本で動くのが特徴で、無段階調光にも対応しています。
筆者がこのモデルを使用して3年ほど。少なくとも4時間は問題なくもってくれるので、ヘッドライトを点ける時間が短い場合は不満なく使えています。4時間経つと明らかに光量が少なくなるのを感じますが、日帰りロング山行をするときに、乾電池1~2本持っていけば電池切れの心配がなくなるのはうれしいところです。
Ledlenser MH7(139g・最大600lm・約12,600円)は、いま挙げたMH5の上位モデルにあたります。電源は単3アルカリ電池2本で、専用充電池にも対応。注目したいのはミドル(170lm)で10時間という点で、この章の「中間モードで5時間以上」という条件を大きく上回ります。赤色灯とスイッチロックも備わっているので、MH5では点灯時間が心もとないと感じた人の乗り換え先になります。
以上でタイプ別の紹介は終わりです。最後に、ここまで挙げたモデルを一覧で見比べておきましょう。
全モデルのスペック比較
この記事で紹介したモデルの一覧です(すべてメーカー公表値)。点灯時間は最大値ではなく中間モードの数字で揃えています。カタログの最大時間はいちばん暗いモードの値なので、実際の使用感とかけ離れてしまうためです。
| モデル | 重量 | 最大 | 中間モードの点灯時間 | 乾電池 | 防水 | 価格 | 向くタイプ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| NITECORE NU25 MCT UL | 46g | 400lm | 400lm/2時間40分 | ✕ | IP66 | 約5,580円 | ②③ |
| Ledlenser HF4R Core | 72g | 500lm | 120lm/5時間 | ✕ | IP68 | 6,600円 | ①③ |
| BD スポット400 | 78g | 400lm | ハイ6時間超 | ○ 単4×3 | IPX8 | 約6,800円 | ①④ |
| Petzl ACTIK CORE | 88g | 600lm | 100lm/10時間 | ○ 単4×3 | IPX4 | 約10,300円 | ④ |
| Ledlenser MH5 | 94g | 400lm | 400lm/4時間 | ○ 単3×1 | IP54 | 8,800円 | ④ |
| Ledlenser MH7 | 139g | 600lm | 170lm/10時間 | ○ 単3×2 | IP54 | 約12,600円 | ④ |
| NITECORE NU21 | 44g | 360lm | —(メーカー非公表) | ✕ | IP66 | 約5,500円 | ② |
候補が絞れたら、最後にもう少しだけ確認しておきたい点があります。
買う前に確認しておきたいこと
スペック表には出てこないものの、使い始めてから気づきやすいポイントを3つ挙げます。
予備の電源をどうするか
充電池だけのモデルを選ぶなら、切れたときの手段を用意しておきましょう。モバイルバッテリーを持つか、軽い予備ライトをもう1つ持つかのどちらかです。NU21のような40g台なら、常にザックに入れておいても負担になりません。
グローブをしたまま操作できるか
冷え込む稜線で素手になる時間は、短いほうが安全です。ボタンが小さすぎないか、店頭で触れるなら確認しておくと安心です。
ヘッドバンドの好み
見落としがちですが、装着感を大きく左右します。ゴムコード式は軽い代わりに好みが分かれ、布バンドは快適な代わりに少し重くなります。
まとめ|「暗いなかを何時間歩くか」で決まります
最後にもう一度、診断の結果ごとに整理しておきます。
- タイプ①はじめての1本:HF4R Core または スポット400(6,000円台で十分)
- タイプ②山小屋+ご来光:NU21 または NU25 MCT UL(軽さ最優先)
- タイプ③早朝スタート:NU25 MCT UL または HF4R Core(中間モードの時間を確認)
- タイプ④深夜発ロング:スポット400 または ACTIK CORE(乾電池が使えること)
ルーメンの大きさを比べるより、自分の使い方から逆算するほうが確実です。そして共通して言えるのは、赤色灯と誤点灯ロックがあると扱いやすいということ。この2つは価格に関係なく使い勝手を左右するので、候補が並んだときの決め手にしてください。
よくある質問
- 結局、何ルーメンあれば足りますか?
-
一般的な登山道を歩くだけなら200〜300ルーメンで足ります。最大光量は、分岐の確認やルートを探すときに一瞬強く照らすための余力と考えてください。実際の行動では100ルーメン前後を使う時間が最も長くなります。
- 充電式と乾電池式、どちらを選ぶべきですか?
-
ライトを点けて歩く時間が4時間を超えるなら、乾電池が使えるモデルをおすすめします。山のなかでも入れ替えて、そのまま使い続けられるためです。1〜2時間程度なら充電式の軽量モデルで問題ありません。
- スマホのライトで代用できませんか?
-
できません。両手がふさがるうえ、防水性がなく、いざというときの連絡手段であるスマホの電池を消費してしまいます。日帰りでも必携の装備と考えてください。
- 予備電池は必要ですか?
-
深夜発のロングルート(タイプ④)では必携です。私も実際に行動の途中で交換しています。充電池専用のモデルを使う場合は、予備電池の代わりに予備ライトかモバイルバッテリーを持ちましょう。
- 赤色灯は本当に使いますか?
-
使います。暗さに目が慣れた状態を保ったまま手元を照らせるので、地図の確認や山小屋・テント場での作業で重宝します。周囲への配慮という意味でも役立ちます。
- 防水はどのくらい必要ですか?
-
最低でもIPX4を目安にしてください。雨が降っていなくても、早朝の登山道は朝露でかなり濡れます。雨天や沢沿いでの使用が多いならIP67以上が安心です。
- ヘッドライトの寿命はどのくらいですか?
-
LED自体は長寿命ですが、先に劣化するのはバッテリーとヘッドバンドです。内蔵電池が取り外せないモデルは、バッテリーの劣化がそのまま製品寿命になります。長く使いたいなら電池交換できるモデルという選び方もあります。
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