北アルプス・常念山脈の主峰常念岳(2,857m/日本百名山)と、その稜線上に連なる横通岳(2,767m)・東天井岳(2,814m)。横通岳と東天井岳はどちらも「日本の高い山ベスト100」=百高山に名を連ねる、山リストを巡る登山者にとって外せない2座です。今回は安曇野側の三股登山口から前常念岳を経由し、この3座を一度に巡ってきました。
三股からの前常念岳ルートは標高差が約1,600m、往復で20kmを超えるロングコース。明るいうちに下山するには早朝3〜4時の出発が現実的で、前夜のうちに登山口近くで仮眠を取る「車中泊前泊」と相性のよい山です。
この記事では、登山歴・車中泊歴10年のソロ登山者の視点で、常念岳・横通岳・東天井岳の前泊スポット・コースの様子・コースタイム・装備・下山後の温泉まで、実際に歩いて分かったことをまとめます。

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常念岳・横通岳・東天井岳の基本情報
| 標高 | 常念岳 2,857m/東天井岳 2,814m/横通岳 2,767m |
| 所在地 | 長野県松本市・安曇野市 |
| リスト分類 | 常念岳=日本百名山/横通岳・東天井岳=日本百高山 |
| 難易度 | 中〜上級(岩稜・ザレ場・長い標高差・水場なし) |
| コースタイム目安 | 標準 約16時間20分/今回の実測 約11時間30分(休憩含む) |
| 距離・累積標高 | 約20.3km・累積登り約2,508m(三股ピストン) |
| ベストシーズン | 7月〜10月(残雪期は雪渓に注意) |
この山域のキャラクター
常念山脈は、松本平からもよく見える美しい三角錐の常念岳を主峰とする稜線。最大の魅力は、梓川を挟んで対峙する槍ヶ岳・穂高連峰の大展望です。三股からの前常念岳ルートは、一ノ沢からの一般的なルートに比べて静かで急峻。常念岳から北へ稜線をたどれば、横通岳・東天井岳という百高山2座をまとめて踏める、百高山リスト派にうれしいコースです。
三股登山口へのアクセスと駐車場
登山口は安曇野市側の三股。日帰り温泉「ほりでーゆ〜四季の郷」を過ぎたあたりから、対向車とのすれ違いが難しい幅の林道を進みます。距離はおよそ8km。全面舗装で管理も行き届いており、落石もほとんどなく、細いわりに走りやすい道でした。
駐車場は、第1駐車場(約80台・全面アスファルト)、第2駐車場(森の広場・約100台・砂利)、まゆみ池駐車場(約20台)の3か所。トイレは第1駐車場とまゆみ池駐車場にあり、第1駐車場のトイレは洋式(ウォシュレット非対応)・洗面台付きで、常時電灯が点いています。水道水は飲用不可なので、飲み水は持参が必要です。駐車場には傾斜のある区画もあり、トイレ付近は比較的フラットです。
何時までに着くか(満車リスク)
常念岳・蝶ヶ岳の登山基地として人気が高く、ハイシーズンの週末は早朝に満車になることもあります。筆者が訪れた6月下旬の平日は、到着時点で駐車場の半分ほどが埋まっていました。多くは1泊2日以上で縦走する登山者の車で、車中泊をしている人も数多くいました。筆者が起床する3時前後から駐車場に続々と車が到着し始めており、混雑時期には早朝3時台の到着でも第1駐車場に駐車できるかが微妙なところです。第1駐車場に停められればラッキー、約800mほど離れた第2駐車場に駐車できればOKくらいの気持ちでいた方が精神衛生上よいかもしれません。
駐車場の空き状況は安曇野市の登山者用駐車場ライブカメラで確認できます。
常念岳の前泊におすすめの車中泊スポット
早朝出発が必須のロングコースなので、前夜のうちに登山口側で仮眠を取っておくと、当日の行動に余裕が生まれます。三股周辺で前泊に使えるスポットを、近い順に紹介します。
【1】三股登山口駐車場(登山口直下)
移動の手間がゼロなのが最大の利点。標高が高く夏でも涼しく、夜も静かです。ただしトイレはウォシュレット非対応・水は飲用不可で、区画によっては傾斜があります。フラットに眠るには、後述するマットを敷いて段差をならすのがおすすめです。

【2】道の駅 アルプス安曇野ほりがねの里(三股まで車で約20分)
道路から離れた南側駐車場が静かで、トイレも整っています。登山口まで少し走りますが、設備の安心感を取るならこちら。

【3】道の駅 安曇野松川(三股まで車で約30分)
★4/5評価の静かな道の駅。駐車場が落ち着いていて快眠しやすく、安曇野観光や北アルプス登山の拠点として使い勝手のよいスポットです。

移動の手間を最小にしたいなら三股登山口駐車場、静かさと設備の安心感を取るなら道の駅、という選び方になります。筆者は前夜にほりでーゆ〜四季の郷で入浴してから三股登山口駐車場で仮眠しました。傾斜が気になったので、マットでの段差対策は正解でした。

実際に登ったコース体験記(三股・前常念岳ルート)
三股登山口から前常念岳を経て常念岳へ。さらに常念乗越まで下り、横通岳・東天井岳の百高山2座を往復してくる行程です。まずはルートの全体像から見ていきます。
ルート全体図

常念岳・横通岳・東天井岳のコースタイム(標準・実測)
| 区間 | 標準コースタイム(累計) | 実測コースタイム(累計) |
|---|---|---|
| 三股登山口(出発 4:01) | — | — |
| 前常念岳 | 4時間45分(累計 4:45) | 2時間43分(累計 2:43) |
| 常念岳 | 1時間20分(累計 6:05) | 49分(累計 3:32) |
| 常念乗越 | 1時間00分(累計 7:05) | 47分(累計 4:19) |
| 横通岳 | 1時間00分(累計 8:05) | 41分(累計 5:00) |
| 東天井岳(折返し) | 1時間10分(累計 9:15) | 53分(累計 5:53) |
| 常念乗越 | 1時間40分(累計 10:55) | 1時間38分(累計 7:31) |
| 前常念岳 | 1時間55分(累計 12:50) | 1時間39分(累計 9:10) |
| 三股登山口(下山 15:20) | 3時間30分(累計 16:20) | 2時間9分(累計 11:19) |
標準コースタイムは合計で約16時間20分。今回は休憩を含めて約11時間30分(駐車場ゲート発3:51〜帰着15:32)で歩いています。標高差・距離ともに大きいので、標準タイムを目安に余裕のある計画を立ててください。
出発前夜〜当日朝
前夜はほりでーゆ〜四季の郷で汗を流し、三股登山口駐車場へ移動して仮眠。訪れたのは6月下旬でしたが、夜はかなり肌寒く薄手の寝袋ではちょっと力不足でした。当日は3時に起床し、ゆるゆると支度をして4時前に出発しました。駐車場のゲートを越えて林道を10分ほど進むと、登山口に到着します。
登り①:樹林帯のつづら折り(登山口〜休憩ポイント)
序盤は樹林帯のつづら折りをひたすら登っていきます。5時半ごろ、標高2,017m付近の休憩ポイントに到着しました。倒木を利用したベンチがあり、ひと息つくのにちょうどよい場所です。


登り②:ハシゴと岩稜帯(休憩ポイント〜前常念岳)
休憩ポイントからしばらく登ると長いハシゴが現れ、これを越えると岩稜帯に入ります。足場に注意しながら登っていくと一気に視界が開け、西側には穂高連峰の山並みが広がります。6時44分、前常念岳に到着。360度の大展望が待っていました。




前常念岳〜常念岳の稜線
前常念岳から常念岳までは傾斜もゆるくなり、景色を楽しむ余裕の出てくる気持ちのよい稜線歩きです。7時33分、常念岳山頂に到着。こちらも360度の展望で、槍ヶ岳・穂高連峰、雲海越しの南アルプス、これから向かう横通岳・東天井岳方面まで見渡せました。




常念乗越へ下り、横通岳へ
常念岳からは、いったん常念乗越まで下ります。このガレ場の下りが長く急峻で、慎重さが求められる区間。常念乗越から常念小屋を見送り、樹林帯を経て岩稜帯・ザレ場を登り返すと、9時1分、横通岳に到着。山頂スペースは狭いものの、展望は素晴らしい一座です。




横通岳〜東天井岳
横通岳から東天井岳まではアップダウンもゆるやかで、ハイマツ帯を気持ちよく歩けます。ただしYAMAPによると、この稜線上はクマの目撃情報が多いとのことで注意が必要です。10時、東天井岳に到着。山頂標識はありませんが、ここも展望は良好。ここで折り返し、来た道を戻ります。




下り:巻き道の雪渓で引き返す
下りは、常念乗越から前常念岳へ続く巻き道を選びました。常念岳へ続くガレ場を登り返すのはかなりしんどいためです。この巻き道は一般登山道として地図には記載されていませんが、ピンクテープやマーカーが多用されており、道は細いものの問題なく歩けます。ところが分岐から10分ほど進んだところで、幅10mほどの雪渓に行く手を阻まれました。傾斜が急なうえ底が見通せず、滑落すれば大怪我では済みません。この先にも同じような雪渓がある可能性を考え、進むのはリスクが大きすぎると判断して引き返し、巻き道入口まで戻ってガレ場の急登を登り直しました。そのガレ場を登っている途中、ライチョウに出会えたのは思わぬご褒美でした。



三股・前常念岳ルートで気をつけたいポイント
このルートを安全に楽しむために、特に意識しておきたい点をまとめます。
- 標高差約1,600m・往復20km超のロング。体力配分が最重要。特に常念岳〜常念乗越のガレ場の下りと、その登り返しは消耗します。
- 水場はありませんが、常念乗越の常念小屋で飲み物を購入できます。すべての水を担ぎ上げる必要はなく、登り切るまでに必要な分を持参し、足りなければ小屋で補給するのが現実的です(小屋までは標高差があるため、序盤の水切れには注意)。
- 岩稜帯・ザレ場・ハシゴが随所にあります。落石・スリップに注意。
- 常念乗越〜前常念岳の巻き道は地図に載らないルート。ピンクテープは多いものの、残雪期は雪渓で通行できないことがあります(筆者は急傾斜の雪渓に阻まれ引き返しました)。残雪期は巻き道を当てにせず、ガレ場ルートを歩く前提で時間と体力に余裕を持ってください。
- 横通岳〜東天井岳の稜線はクマの目撃情報が多い。熊鈴など対策を。
- ソロ・単独行の備え:登山届の提出、エスケープの取りづらいピストン行程であること、電波状況、ココヘリ等の備えを確認しておくと安心です。
実際に使った装備
必須装備
水場がないため、水は多めに。行動食、地図・GPS(巻き道や残雪の判断に役立ちます)は必携です。レインウェアやヘッドランプといった日帰り登山の基本装備は、ここでは省略します。
あると安心だった装備
今回いちばん「持ってきてよかった」と感じたのは、登山そのものよりも前泊でのマット(サーマレスト Zライトソル)でした。三股登山口駐車場は区画によって傾斜があり、そのままでは寝づらいのですが、マットを敷くと段差や傾斜がやわらぎ、しっかり仮眠できました。車中泊と登山のどちらにも使える定番なので、前泊で登る山には特におすすめです。

また、長いガレ場の下りではストックが膝の負担を軽くしてくれます。選び方は別記事で詳しくまとめています。

登山口周辺の日帰り温泉
三股周辺には、前泊にも下山後にも使える日帰り温泉があります。筆者は前夜に「ほりでーゆ〜四季の郷」、下山後に「安曇野しゃくなげの湯」を利用しました。
ほりでーゆ〜四季の郷(前夜利用)


三股へ向かう途中にある日帰り温泉。入浴料は700円、ドライヤーは有料(100円)。露天風呂は小さめの湯舟が2つ。露天・内湯ともに適温です。洗い場には仕切りがあります。シャワーは湯量の調整ができず、自動ですぐに止まる仕様で少し使いにくい印象でした。脱衣所前にリターン式のロッカーがありますが、ドライヤーが有料なので、ドライヤー用の小銭を脱衣所に持ち込んでおくとスムーズです。
安曇野しゃくなげの湯(下山後利用)

下山後に立ち寄りました。洗い場に仕切りはありません。シャワーは湯量の調整ができず自動で止まる仕様ですが、こちらはやや長めの設定です。露天風呂はあつめの湯(約43度)とぬるめの湯(約40度)の2種類があり、登山で火照った体にも、冷えた体にも合わせて入れます。入浴料は600円、ドライヤーは100円。やや混んでいる印象でした。
| 施設 | 三股登山口から | 営業時間 | 料金(大人) |
|---|---|---|---|
| ほりでーゆ〜四季の郷(前夜利用) | 車で約15分 | 10:00〜21:00 | 700円 |
| 安曇野しゃくなげの湯(下山後利用) | 車で約25分 | 9:30〜21:30(第1水曜休) | 600円 |
まとめ|常念岳・横通岳・東天井岳は前泊で余裕を持って
三股からの前常念岳ルートは、標高差・距離ともに大きいロングコースですが、その分、常念岳・横通岳・東天井岳の3座と槍・穂高の大展望をまとめて味わえる、満足度の高い縦走路です。百高山を巡る方はもちろん、静かに北アルプスの主稜線を歩きたい中級者以上の方にもおすすめできます。早朝出発が必須なので、前夜のうちに三股登山口駐車場や近隣の道の駅で前泊し、余裕のある計画で臨むのが成功のカギです。
※ 本記事は筆者の登山時点での体験・情報をもとにしています。登山道・駐車場・施設の状況は変わることがあります。入山前に最新情報(自治体・山小屋・YAMAP等)を必ず確認し、天候・体力に応じた無理のない計画で、自己責任のもと安全な登山をお楽しみください。
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